Background: 産科診療における多くの異なる臨床場面で,妊婦に酸素補給が行われている。 母体の高酸素化の用途は認められているものの,高酸素が母体の血行動態指標に与える影響については評価されていない。 その結果、文献上では、酸素補給に応じた母体循環の生理的変化に関するデータが乏しくなっている。
目的 酸素療法の血行動態への影響は十分に認識されておらず、高酸素化が母体の血行動態に与える影響は現在のところ不明である。 経胸壁生体反応法を用いた非侵襲的心拍出量モニタリングにより、妊娠第3期の妊婦の短時間の高酸素療法が心係数、全身血管抵抗、血圧、脳卒中量、心拍数に及ぼす影響を、同じ期間の高酸素療法を受けた非妊婦集団で観察された影響と比較検討した。
試験デザイン。 非侵襲的心拍出量モニターを用い、30分間連続的に血行動態をモニタリングした。 高酸素化(O2 100%v/v吸入ガス)は部分的非再呼吸マスクを介して12L/minの速度で10分間行った。 過酸素投与前,過酸素投与終了時,過酸素投与終了10分後に心係数,全身血管抵抗,脳卒中量,心拍数,血圧を記録した. 血行動態指標の経時的変化と2群間の差異を評価するために、反復測定による二元配置分散分析を用いた。
結果 年齢中央値33歳(四分位範囲26~38歳)、32歳(四分位範囲28~37歳)の妊婦46名、非妊婦20名をそれぞれ前向きに募集した(P=0.82)。 妊娠期間の中央値は35週(33-37週)であった。 妊娠群では、高酸素曝露期間中に心指数が低下し(P=.009)、同時に全身血管抵抗が上昇したが、高酸素曝露停止後10分では回復しなかった(P=.02)。 心拍数は高酸素曝露後に低下し、治療停止後10分までにベースラインまで戻った。 曝露期間中、収縮期血圧、拡張期血圧に変化はなかったが、脳卒中量は減少した。 非妊娠群では、高酸素曝露期間中、心係数、全身血管抵抗、脳卒中量、心拍数、収縮期血圧、拡張期血圧に有意な変化はなかった。
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