標準的なマノメトリーで下部食道括約筋圧が正常な胃食道逆流症患者に対してどのような検査を行うべきか

D.O. Castell (Philadelphia)

一般的に10mmHg以下と定義される低い下部食道括約筋(LES)安静時圧は、伝統的に胃食道逆流症(GERD)の特徴と考えられてきたが、今では異常逆流患者(食道炎患者を含む)の大多数がこの値より高い安静時圧を持っていると認識されてきている。 実際、Kahrilasらの研究では、65人のGERD患者のうち12人だけがLES圧が10以下であった。 GERD患者の大半はLES圧が正常範囲にあったが、LES圧の平均値は食道炎症がひどくなるにつれて減少する傾向にあった。 また、この研究では、GERDが認められるにもかかわらず、安静時のLES圧が正常値よりも高い(> 45mmHg)患者もいたことは興味深い点であった。 我々の研究室でのその後の研究で、24時間pHモニターで異常な酸分泌が証明されたGERD患者の5.2%が高血圧性安静時LES圧であったことが証明されている。 この現象はGERD患者におけるLES圧の動態に関するこれまでの概念と矛盾するように思われるが、現在ではこのような状況は予想外であることが明らかになりつつある。 1980年のDentらの研究以来、逆流が起こる主なメカニズムとして安静時LESの一過性の弛緩が重要であることが一般に受け入れられている。

それでは、大多数の患者は安静時LES圧が正常であることから、GERDの存在を示す有用な指標となるのは何だろうか? 我々の研究室での最近の研究では、異常な逆流がある患者(外来pHモニターで確認)では、LESの低血圧よりも「食道運動の非効率性」がより一般的なマノメトリ所見であることが証明されている … 私たちは、嚥下誘発性収縮の30%以上が食道遠位部で30mmHg以下の圧力で、伝達されないものも含めて、食道運動が不活発であると定義した(すなわち、”failed peristalsis”)。 pHモニターで異常な逆流を記録した連続した100人の患者を調べたところ、34%がこのような食道運動不全を示したが、安静時LES圧が10mmHg以下だったのは4%だけであった(図1)

Figure 1. GERDにおける食道内圧測定(連続100例)
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1. Kahrilas PJ, Dodds WJ, Hogan WJ, et al. Eptic esophagitisにおける食道蠕動機能障害. Gastroenterology 1986;91:897-904.

2. Katzka DA, Sidhu M, Castell DO. 高血圧性下部食道括約筋の圧力と胃食道逆流:珍しくない見かけ上のパラドックス。 Dent J, Dodds WJ, Friedman RH, et al. Recumbent asymptomatic human subjectsにおける胃食道逆流症のメカニズム. J Clin Invest 1980;65:256-267.

4. Leite L, Johnston B, Barrett J, Castell JA, Castell DO. 非特異的食道運動障害(NEMD)は、主に非有効性食道運動(IEM)である。 Gastroenterology 1995;108:A147.