コリネバクテリウム属菌を病原体とするもの。 症例紹介

症例1:2003年、筆者は右眼に明らかな感染性結膜炎を呈した高齢者の症例に遭遇した。 受診の2年前に白内障手術後,軽度の結膜充血と粘液滲出を経験した(図1)。 術後もキノロン系点眼薬を使用していたが,眼科的な検査は受けていなかった。 3ヶ月以上前から眼の違和感があった。 おりもののグラム染色塗抹標本では,グラム陽性桿菌を貪食する多形核白血球が多数認められた(図2)。 おりものの培養からキノロン耐性コリネバクテリウム属菌が検出され,セフェム系抗生物質に感受性があった。 キノロン点眼液からセフェム系抗生物質に変更したところ,症状は改善された。 本症例はCorynebacterium属菌による結膜炎であることが明らかとなった。 その後,老年者におけるCorynebacterium結膜炎の症例が多く,また,角膜移植を受けた患者におけるCorynebacterium角膜炎の症例も数例発生した。

Figure 1.

1 例目に感染性結膜炎が発生した。 軽度の感染性結膜炎を認めた。

図2.感染性結膜炎の発生状況。

症例1の排出物サンプルのグラム染色、原倍率×1000 パリセードや「I、またはV」の文字型のグラム陽性桿菌が多形核好中球白血球内に確認されました。

症例2:図3 A & Bは糖尿病の青年の眼表面である。 2度の硝子体手術後、難治性の糸状角膜炎を発症していた。 筆者のクリニックに紹介されたときから,モキシフロキサシン点眼液が6カ月以上(1回目の硝子体手術の周術期から)処方されていた。 粘膜膿性黄色吐物を伴う感染性眼瞼結膜炎と診断したところ,眼瞼結膜炎により眼瞼が腫脹し,腫脹した眼瞼の一部が難治性の糸状菌性角膜炎を誘発した可能性が考えられた。 おりものの塗抹標本を分析すると、多形核白血球とグラム陽性棒状細菌がパリセード状や「I、V、W」字状に多数配列していた(図4)。 排出物の培養液から、市販の簡易同定キット(BBL Crystal、日本BD社、東京)を用いてCorynebacterium種を同定した。 また、筆者は、羊血液寒天培地からCorynebacterium属細菌を分離し、API-Coryne(bioMérieux SA, Lyon, France)により生化学的性質を調べ、原因菌をCorynebacterium macginleyionであると同定した。 この菌株に対するmoxifloxacinおよびceftriaxoneの最小発育阻止濃度(E-test®,bioMérieux SA, Lyon, Franceによる試験)はそれぞれ>256 μg/mL, 2 μg/mLであった。 moxifloxacinをcephmenoximの外用に切り替えると,眼瞼結膜炎と糸状菌性角膜炎は速やかに改善した(図5)。

Figure 3.

” xmlns:mml=”http://www.w3.org/1998/Math/MathML” xmlns:xsi=”http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance” xmlns:sym=”http://www.w3.org/2012/symbol”>ケース2の前眼部である。 また、中等度の眼瞼結膜炎、黄色い粘液膿性分泌物、糸状角膜炎を伴う角膜びらんが見られた。

Corynebacterium属は、特に老人の慢性結膜炎の主要病原菌の一つといっても過言ではありません。 また、免疫力の低下した患者さんでは感染性角膜炎を引き起こすこともあります。 これらの疾患は、眼表面の細菌叢が乱れたときに、日和見感染によって引き起こされることがあります。 Corynebacterium属菌による眼内炎は非常にまれである。 C. macginleyiは眼表面から分離される一般的なCorynebacterium属細菌であるが,他の属細菌による症例も報告されており,C. macginleyiが眼感染症の主要な原因細菌であるかどうかは不明である